経済圏を提供した楽天と、ロジスティクスを提供したアマゾンの違い
楽天経済圏を構築し、ついには携帯までも経済圏に取り入れようとする三木谷氏の考えを知りたくて拝読しました。
日本の企業としてeコマース業界で一定の地位を占める楽天には、これからも頑張って欲しいと思います。
三木谷氏は本書で楽天市場の本質は「店主と購入者とのコミュニケーションだ」と述べています。
価値観の違いと言ってしまえばそれまでですが、私には購入後に山のように届くメールは
「迷惑メール」としか考えられません。
また「ワクワクするような体験をもたらす商品販売のページ」は、まるで迷路であり
必要とする情報にたどり着くまで、不要な時間を費やす罠のように感じてしまいます。
そんな楽天市場で、あえて購入する理由は「楽天経済圏での消費」を行うためであったり
「ポイントを勘案した結果一番安くなった」経済的合理性です。
本書の中で地ビール業者の奮闘などが述べられていますが、このような嗜好品であればともかく
洗剤のような日用品は「一番安いところで購入する」ことが、資本主義経済の本質ではないでしょうか。
三木谷氏は「価格だけでを見ていると、価格の裏にある文化や良さが失われる」といっていますが、
それでは楽天やアマゾンにより駆逐された、地域の馴染みの個人商店のことはどこに行ったのでしょうか。
アマゾンの優れたところは言うまでもなく「顧客が商品を手にするまでのロジスティクス」を構築したからであり
顧客が商品を手にするまでのコストを最小化したからです。
楽天も少し前に出店者負担による送料の無償化を半ば義務化して世間を騒がせましたが、良しにつけ悪しきにつけ
新自由主義経済が浸透した現在、さらに過去30年間実質賃金の上がらなかった日本においては
残念ながら「低価格」を軸に販売を行うしかないのです。
地ビールなど、独自性の強いものはメッセージやエピソードを発信して、商品を買う体験そのものを
価値にすることができますが、それは あまたある商品のほんの一部に過ぎません。
三木谷氏のM&Aに対する考え方、また楽天の文化に対する考え方は参考になりました。
手厳しいことを書きましたが、楽天経済圏を中心にまだまだ成長の余地のある楽天なので
これからもあっと言わせるようなサービスを展開してほしいものです。
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