書評★★★★:安いニッポン 「価格」が示す停滞 (日経プレミアシリーズ)

全てダイソーとユニクロが悪いとは言わないが。このままでは日本経済は衰退の一歩。

リベシティの両学長のコラムにて紹介されていました。
本書でも数回出ている「合成の誤謬」について関心を持っていたため拝読。

安すぎる日本の実態と世界の実勢を、様々な指標を用いることにより解き明かしています。

バブル経済が終了してはや30年近く経ちます。ダイソーやユニクロが、全国津々浦まで展開され
生活するには便利は世の中になった一方「セブンイレブンのステルス値下げ」に代表されるように
企業が正々堂々と値上げを宣言する文化が、失われてしまいました。

振り返ればバブル崩壊後、様々なマスコミが「バブルは悪」と報道し、多くの日本人にとって
「お金儲け≒悪」のような間違った価値観が形成されたのではないでしょうか。
たとえば職場で「給料を上げてください!」と堂々と言える人がどれだけ居るでしょうか。

個々が目先の価格のみを追求することで、個人の生活は最適化されますが、日本全体の経済という目で見るとそれはすなわち「茹で蛙経済」への入り口であり、ひいては個々の賃金が抑制されます。
これが合成の誤謬なのですが「果たして我々はこの悪循環から抜け出せることはできるのだろうか」という観点で本書を読みましたが、この悪循環から抜け出すことは相当難しいとの印象を受けました。

悪循環から抜け出すためには、我々日本人が、世界の趨勢について正しい知識を持ち、できれば語学力を向上させ、アメリカのように海外からの優秀な労働者を積極に受け入れ、経済を拡大再生産の基調にいち早く乗せることが必要です。

そのような考えを持った人が一人でも増えれば、少なくとも「世界の先進国から一人だけ遅れる日本」のような現状から抜け出せるはず。

星は4つ。大人気ベストセラー「Factualness」が好きな人は、ぜひ拝読を。

― 書評の星の数はAmazonのレビューのものをそのまま掲載してます(最大は★5つ)―

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