書評:★★★★革命のファンファーレ 現代のお金と広告 西野 亮廣 著

本日のTBSラジオ「伊集院光のラジオと」に出演されており、話が面白かったので拝読。

毀誉褒貶のある西野氏ですが、ラジオ出演の際の話を聞いて好感を持ちました。

本書は著者の絵本の出版に関わる戦術と戦略を交えて、インターネット時代の販売戦略を解説しています。

本人のラジオの話もしかりですが、物事をよく考えて行動されています。
今日のラジオでは、以下のような論法を展開していました。

「テーマ:ひな壇番組は以前からあったが、最近増えてきたなのはなぜか」
2000年代に急速に増えてきたひな壇番組に関して
・地デジが始まって、物理的な画面がワイドになった
・ひな壇を並べて芸人を横並びにすると、画面の座りが良くなる(見栄えがする)
だからひな壇番組が増えてきたと。

一方本人がなぜ ひな壇番組を敬遠するようになったのかについては
・スマホが普及し、スマホの画面ではひな壇番組では認識されづらくなった
・認識されづらくなると、西野である必然性がなくなる
といったような認識でした。

つまりテクノロジーがひな壇番組を増加させ、別のテクノロジーの進化がひな壇番組絵の出演を避けざるを得ない
シチュエーションを作ったということです。

このエピソードでもわかるように、西野氏は生粋のマーケターなのです。
西野という商品をどのようなテイストで仕上げれば、効率良く売れるのかということを常に考えています。

本書の中で心に残った考えた以下のとおりです。
・絵本を無料化することの狙いは、ロングタームでの収益増加を図ることである
・子育てに忙しいお母さんは通常「慣れ親しんだ信用できる絵本」しか買わない
・故に絵本業界はイノベーションがなく、古くからの絵本がベストセラーになっている
・一度無料にしてしまえば、集客力が増えるので分母が肥大化し、絶対的な販売数は伸びる
また子育てに忙しいお母さんに本の内容をテイスティングさせることで、購入することへの抵抗がなくなる
しかも多くの人が目にするので、自分以外の他人の時間を使いプロモーションができる
等々、学ぶべきところが多かったです。

卑近な話で恐縮ですが、私自身もヤフーオークションが流行っていた頃、意図的に販売価格を「1円スタート」にし
多くの集客を集めることで、結果的に同じ時期に販売されていた同じ商品をより高く販売する戦略をとっていました。

時代や場所は変われど「人が人を呼び、人気が高くなる」ことは変わらないということです。

最後に本書から「そうはいってもなかなか一歩踏み出せないあなた」に送る一言を引用します。


「面白いのですが、一旦持ち帰って、上の人間に確認します」と言う新人と、 「面白いので、僕がなんとかします」と言い切る新人。
同じ新人でも、後者には覚悟がある。決定権がある。
膝を震わせながら、それでも「なんとかします!」と言い切って、挑戦し、たとえば敗れた新人を、周りの人間は見捨てるだろうか?  いいや、見捨てない。

その新人が見せた覚悟は応援に値し、必ずもう一度チャンスがやってくる。


2020年締めくくりの読書として、大変参考になりました。良書です。