最近消費者を欺くかのような「ステルス値上げ」を繰り返すセブンイレブンですが、その「中の人」の本音はなかなか伝わってこないものです。
本書はセブンイレブンの「中の人」であり、韓国でセブンイレブンを飛躍的に成長させた「おにぎりの本多さん」の奮闘記です。
本書で印象に残ったのは、冒頭で書いたとおり「セブンイレブンの中の人が何を考えているか」ということが当事者視点で語られていることです。
今のセブンイレブンもおそらく同じ視点だと思いますが、「中の人」としては「常に消費者が何を求めているか」を追求し、故にコンビニオーナーと共に状況を観察し、共に考え、紡ぎ出された仮定から答えを求めだしていこうとする姿勢です。
一時期「コンビニのオーナーは、ブラック企業のど真ん中であり、オーナー自体がフランチャージーからの不当な搾取で追い詰められている」といったような報道が見受けられましたが、本多さんが居た時代の「中の人」はコンビニオーナーとともに顧客が何を求めているかを常に追求し、ともに反映していこうという姿勢が強く感じられました。
また「お隣さん」でありながら「時に日本人の想像を超えた振る舞いを行う韓国」に対しても、実際に暮らしてみて市井の人々を観察し、理解していくと、彼らの立ち居振る舞い方がよく理解できます。
少し前韓国が国の表記を「Korea」から「Corea」に帰るという話があり、個人的に訝っていましたが、
本書で「Corea」表記の歴史について学ばさせていただき、「Coreaの表記にも分がある」ことを理解できたことは大きなメリットです。
随所にイトーヨーカドーで日本のセブンイレブン事業を立ち上げた鈴木氏のことが書かれていますが、鈴木氏自身が「消費者の目線」を常に重視し、情報をアップデートし、そのことが日本一のコンビニを作り上げた源泉であることがよくわかりました。
日本一のコンビニといえども、結局は「愚直に消費者目線を常に重視し続ける」ことが唯一であり最大の戦略なのです。
話は変わって、先程ある経済ジャーナリストが「バブル後の日本企業の最大の敗因は、企業が消費者に商品の値上げを求めず、消費者もダイソーやユニクロなど、商品の質よりも価格を極端に重視した」ことにより「個人の消費選択は最適化」できたが「全体としての消費行動の最適化に失敗したこと」だと話していました。
つまり「企業が値上げに極度に及び腰になっている」ことが現代日本経済の最大の問題点だという指摘です。
冒頭の「ステルス値上げ」はこのことに端を発しているものと思いますが、セブンイレブンの最大の戦略であった「消費者目線」がおざなりにされていませんでしょうか?
コンビニの覇権を握って、広く日本の消費におけるリーダーになったのですから、姑息なことはせずいい商品であれば、それなりの価格をつけることが重要だと思いますよ。 → セブンイレブンさん!
話がそれてしまいましたが「中の人が何を考えているのか」と「韓国の市井の人々」の考え方や暮らしがよくわかり大変勉強になりました。
星は4つ。良書です。