元キングコング西野氏のオススメにより拝読。
前野氏の不遇な年少期と現在のビジネスについて、本人の振り返った記録が綴られています。
幼き頃に母親を亡くし、事実上一人で社会に放り出された辛さや、親戚の家を盥回しにされた事実は、我々のように何不自由なく育ってきたものにとっては想像を絶する辛さがあったはずです。
本書では省かれていますが、世間から外れた行いも相当経験してきたようです。
前田氏の秀でているところは、その時点で好きだった音楽を生かしろ路上ライブで生計を立てようとしたところ、また、小学生がなんのツテもなく路上ライブを始めて案の定うまくいかなかったのですが、そこで自分を客観的に見つめることで「自作の歌ではなく、通りすがりの人が興味を持つ歌謡曲に活路を求める」というマーケティング思考に行き着いたことだと思います。
さらに卓越していると感じたことは、活動の場を東京の西側に移し、その地点での行き交う人々の違いに気づき、その場にあった趣向に変えることで、収益を適切化して行ったことです。
その後外資系投資銀行に就職し生涯の師に出会うのですが、その師が心がけていた「誰をも愛し、誰からも好かれることが結局一番になる」という思考には、心を揺さぶられました。
本書で印象に残ったフレーズを一部引用します。
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こうして、「未知より既知」という仮説をベースに、僕は当時流行っていたアーティストの曲を練習して、ひたすらカバー曲を歌うことにしました。お客さんの反応も見ながら、どんどんレパートリーも増やしていきました。 すると少しずつですが確実に、立ち止まってくれる人の数は増えていきました。この辺りから、仮説を立てて、行動に移し、着実に結果が出ていくことの楽しさを感じ始めました。「ちゃんと作戦を立てれば、自分の思い通りの結果に導けるんだ」そんな風に感じたのを覚えています。」(『人生の勝算 (幻冬舎文庫)』(前田裕二 著)より)
第二に、絆やコミュニティ作りの成功において、先天的な要因はほとんど関係がないからです。コミュニティの成功に影響を与える最大変数は、後天的な努力の絶対量です。これが、限られた誰かに与えられた才能や特権であるなら、話は違います。しかし、正しい方法論で十分量のアクションを踏めば、誰もが良質な絆とコミュニティを生みだすことができて、その結果、現代に沿ったスタイルでビジネスを加速させることができます。」(『人生の勝算 (幻冬舎文庫)』(前田裕二 著)より)
宇田川さんは人に好かれる天才ですが、それ以前に、「人を好きになる天才」でした。他人と接して、その人のいいところや、感謝できるポイントを自然に見つけて、まず自分から本当に好きになってしまう。」(『人生の勝算 (幻冬舎文庫)』(前田裕二 著)より)
「あなたはまだインターンということだから知らないかもしれないけれど、UBSに、宇田川さんって方がいらっしゃるの」 と、女性は話し始めました。僕は、「自分の直属の上司が宇田川さんなんです」と伝えるタイミングを逃したまま、話を聞いていました。 「それがね、宇田川さんだけなのよ。毎日通るときに私と目を合わせて、『○○さん、おはよう!』とか、『いつもありがとう』と、挨拶をしてくれるのは」」(『人生の勝算 (幻冬舎文庫)』(前田裕二 著)より)
そして100に、どんどん引き上げていくために、二つのことを意識し始めたそうです。一つは、誰からも好かれてサポートしてもらえる環境を作ること。当然そのためには、自分から好きになることが必要だと思っていたそうです。二つ目に、自分のこと以上に周りに時間を使って、周りを強く育てることで、チームとして最強になること。」(『人生の勝算 (幻冬舎文庫)』(前田裕二 著)より)
すると藤井さんは、さっきまで騒いでいたトーンとは違う、真面目な声で言いました。 「前田よ、仕事を舐めるな。お前は株を勉強して、お客さんに投資判断のアドバイスをすることが仕事だと思っているだろ。まったく違う。仕事は、ゲームだ。ゲームで勝つにはルールがある。そのルールをお前は、ちゃんとわかってない。だから成果が出ないんだ」 ……衝撃でした。仕事はゲーム。考えたこともありませんでした。」(『人生の勝算 (幻冬舎文庫)』(前田裕二 著)より)
自転車を放置する相手の気持ちに立って、「自分が相手だったら」置きたくなくなるように、工夫すればいいのです。例えば、自転車を本当に置かせたくないなら、「自転車捨て場」と張り紙をすれば良い。自転車を捨てられたくないから、そこには自転車を置かなくなるでしょう。これが「他者の目」です。」(『人生の勝算 (幻冬舎文庫)』(前田裕二 著)より)
僕だったら、まずは宝石がこの大きな鉱山のどこに埋まっているのか、どのようにしたら効率的に掘ることができるのかを全力で考えて、仮説を立てることにエネルギーを注ぎます。 すでに掘り始めているライバルをよそに、山の麓に住む街の長老にヒアリングしたり、実際に採掘できた地元の人に会ってみたり、宝石のありかの地図や探知機のようなものを探してきたり、あらゆる手段を使って効率的な採掘手段は何か、仮説を立てます。 その鉱山のA~Zの採掘地点のうち、CとDに原石が埋まっている可能性が高いとわかると、他の地点は捨てて、CとDを掘るのに全力を注ぎます。 このポイントを探し当てることが、「見極め」です。 見極めたら、後は血みどろになっても掘る。絶対に、見つけるまで掘る。」(『人生の勝算 (幻冬舎文庫)』(前田裕二 著)より)
選ぶ、ということは、同時に、何かを捨てることです。何かを得ようと思ったら、他の何かを犠牲にしないといけない。人生の質を高めるのは、選択と集中です。」(『人生の勝算 (幻冬舎文庫)』(前田裕二 著)より)
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なんといっても「正しい努力を、正しい量を行えば、必ず結果は出る」という考え方に勇気付けられました。元キングコング西野氏が著書で「王貞治監督が、努力をして結果が出ないのは、努力の量が足りないだけ」と言っていましたが、いずれも継続することの大切さを示したものです。
また前田氏が「事を実施する前に、どのように行えば良いのか仮説を立てて、成功する確率を高めてから実際に着手する」と述べていますがこの点にも感心しました。
私を含めて多くの凡人は「穴を掘ってから、穴から出る脚立を用意している」のではないでしょうか。
ポジティブな内容と、俄かには信じられないサクセスストーリー、またそれを裏付ける戦略思考は大変参考になりました。
評価は星4つ。
新しい年を素晴らしいものにできる可能性を高める、良書です。