以前他のレビューにも書きましたが、東京地検特捜部に逮捕されるような人物は本来飛び抜けて優秀であり、時代の転換の間に落ちてしまったが故に、人生を狂わされてきた人がほとんどです。
本書は昭和から平成にかけてバブルに踊らされ「リクルート事件」を起こしたリクルートの創始者「江副浩正」の人物伝です。
かねてから江副浩正その人に関心がありましたが、その複雑な生い立ちや企業に至る経緯、また最期について本書では詳細に、また客観的に記載されています。
本書で特に面白かったのは、KDDI発足時に「京セラの天皇稲盛和夫」氏にいわば裏切られたこと。またその後、傍から見れば順調に事業を成長させていった江副氏が、家庭環境も含め崩壊していったこと。「情報革命」を起こし、会社が発展するに連れ「大マスコミ」の既得権を侵食し、敵を作っていったこと。
そしてそれまでは普通に行われたいた「未公開株の譲渡事件」を発端に、正義の味方「朝日新聞」に目をつけられついには自ら墓穴を掘り東京地検特捜部に逮捕されるまでの流れです。
ライブドアのホリエモン然りですが、結局この国は大既得権益である「マスコミ」を的にすることはアンタッチャブルであり、結果として奈落の底に起こされるという構造が、昭和の時代からおそらく令和の現代に至るまで全く変わらないのです。
また東京地検特捜部の巧妙なストーリー作りと、歪んだエリート意識に支配された「メディア先導による国策捜査」には辟易しました。
本書の内容からは外れますが、インターネットが普及した現在、情報の真偽を自分で確かめる術や他の人がどう考えているかを用意に知ることができます。大切なことはやはり「自分の頭で考えること」であるということを改めて認識しました。
その他、なんとアマゾンのジェフ・ベゾスが一時期江副氏の部下であったり、今まで知らなかったことが豊富に織り込まれており、読破するのに少し時間がかかりますが、筆者の調査力と客観的な解説に 読む価値は十二分にあります。
評価は星は5つ。良書です。